店舗の内装工事の耐用年数はどのくらい?減価償却との関係や注意点について

店舗の内装工事の耐用年数はどのくらい?減価償却との関係や注意点について

店舗の内装工事費用は、減価償却の対象です。
内装工事にかかる費用は、建物や建物付属設備の勘定科目で計上され、減価償却には構造や用途によって異なる「耐用年数」があります。
また、自社所有物件と賃貸物件では、計算方法が異なることも把握しておきましょう。
そこで今回は、内装工事における店舗の耐用年数や、耐用年数と減価償却の関係、減価償却時の注意点について解説します。

内装工事における店舗の耐用年数はどれくらい?

内装工事における店舗の耐用年数はどれくらい?

まずはじめに、耐用年数とはなにか、減価償却との関係や内装工事における店舗の耐用年数について、解説します。
自社所有物件と賃貸物件の耐用年数の違いも抑えておきましょう。

そもそも耐用年数とは

耐用年数と似た言葉に、「耐久年数」というものがあります。
耐久年数とは、メーカーが物品を安全に利用できると独自判断した年数のことです。
一方で、今回解説する「耐用年数」とは、対象となる資産の法律で定められた使用期間のことです。
減価償却資産は利用中に価値が減少し、利用開始から耐用年数終了まで、毎年経費として計上していきます。
なかでも、内装工事の一部は、建物の耐用年数に基づき固定資産として処理されてます。

耐用年数と減価償却の関係

対象となる資産の減価償却は、国が定めた法定の耐用年数に従っておこなわれます。
財務省令の定めた「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」では、各償却資産の耐用年数が規定されています。
内装工事の費用を減価償却する場合、内装の種類に基づいて耐用年数を判断し、複数年にわたって経費を計上していくのです。

内装工事における耐用年数と勘定科目

内装工事で使用する材料や用途によって、法律で定められた耐用年数は異なります。
同じ工事であっても、木材と金属では耐用年数が異なり、金属は木材より耐久性が高いため、それに伴い耐用年数が長くなります。
また、内装工事で使用する勘定科目は「建物」や「建物付属設備」で、工事が建物自体か附属設備かによって耐用年数が変わるため注意しましょう。
以下は、内装工事における耐用年数の一例です。
勘定科目:建物
勘定科目を建物で考えるのは、壁や床の内装工事など建物と一体になっているケースです。
たとえば、木造店舗用建物の壁を内装工事するのなら、耐用年数は22年となります。
建物の用途によって耐用年数も変わるため、注意しましょう。

●木造・合成樹脂造の場合、店舗用は22年、飲食店用は19年
●木骨モルタル造の場合、店舗用は20年、飲食店用は19年
●鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の場合、木造内装部分の面積が30%以上のものは店舗用で39年、飲食店用で34年


勘定科目:建物附属設備
建物と一体のように見える設備でも、照明設備などの電気設備、給排水設備、ガス設備、冷暖房設備などは、建物付属設備として計上します。
また、陳列棚やカウンターなどの店用簡易装備、可動式のパーテーションなども建物附属設備に該当します。

●アーケードは主として金属製の場合が15年、それ以外は8年
●冷暖房設備は13年
●給排水または衛生設備およびガス設備は15年

自社所有物件と賃貸物件による耐用年数の違い

自社所有物件と賃貸物件では耐用年数が違います。
内装工事のなかでも「建物付属設備」以外の内部造作は、建物の耐用年数に応じて減価償却します。
自社所有物件の内装工事
自社所有物件の場合、建物の耐用年数に基づいて減価償却をおこないますが、建物が新築か中古かによって異なるので注意が必要です。
新築物件のケースでは、建物の種類から法定耐用年数を確認し、それに基づいて耐用年数を設定します。
中古物件のケースだと、使用可能期間から耐用年数を算出するのです。
その使用可能期間(耐用年数)は、「(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)」で計算されます。
賃貸物件の内装工事
賃貸物件においては、「内装工事をおこなった建物の耐用年数や種類、用途、使用している材質などを考慮して、合理的な耐用年数を見積もる」という方針が示されています。
合理的であれば何年であっても問題はありませんが、10~15年が一般的です。
以下の条件をすべて満たしていれば、賃貸期間を耐用年数として扱うことができます。

●賃借期間の定めがある
●賃借期間の更新ができない
●有益費の請求または買取請求ができない


また、冷暖房の設置など、付属設備となる内装工事については、各法定の耐用年数を適用します。

内装工事の費用を減価償却するメリット・デメリット

内装工事の費用を減価償却するメリット・デメリット

耐用年数は資産の一般的な使用可能期間のことで、減価償却は固定資産の購入費用を使用可能期間で分割し、計上する会計処理を指します。
減価償却の目的は、適切な損益計算をおこなうことで、取得した年度の損益に影響を与えないことです。

内装工事費用を減価償却するメリット

メリットとして節税や資産の残存、損益の把握があります。
減価償却では、資産を何年にもわたって償却するため、翌年以降も利益額を抑えることが可能です。
利益額が少なくなると、当然課税額も少なくなるので、結果的に節税につながるのです。
さらに減価償却をおこなうと、会社の損益を正しく把握できるため、事業計画も立てやすくなります。

内装工事費用を減価償却するデメリット

ただし、会計処理の手間や、税制改定に伴いアップデートが必要になるというデメリットも存在します。
耐用年数を調べたり、減価償却のルールを確認したりと、手間がかかるのは事実です。
また、会計処理は年度末の忙しい時期におこなうため、余裕を持って取り掛かりましょう。

ケース別!内装工事の減価償却時の注意点

ケース別!内装工事の減価償却時の注意点

内装工事の減価償却では、いくつか注意点があります。
最後に、内装工事の減価償却時の注意点を3つのケース別に解説します。

改修工事の減価償却の注意点

改修工事とは、資産の機能を向上させるために行われる工事のことです。
改修工事の内容によって、資本的支出と判断されれば「固定資産」、修繕費に含まれると認められると「必要経費」として計上することとなります。
減価償却できる固定資産の対象となる改修工事は、避難階段の取り付けや防水加工、また耐震性の向上などが挙げられます。
また、固定資産か必要経費かの判断は、国税庁の法令解釈通達で確認が可能です。
なお、判断が難しい場合は、金額が60万円未満であるか、対象資産の前期末の取得価額の約10%以下に相当すると修繕費として計上します。

原状回復工事の減価償却の注意点

原状回復工事とは、入居当初の資産機能を回復させる工事のことです。
国税庁の法令解釈通達によれば、原状回復工事は通常、修繕費に該当し、必要経費として計上されます。
しかし、仕訳時に「原状回復費用」であることを明確に記載していなければ、資産計上しなければならない可能性があります。

オフィス移転時の減価償却の注意点

オフィスの移転に伴う内装工事も、減価償却の対象です。
ほかの内装工事と同様に、内装の種類に応じて耐用年数を判断します。
また、賃貸物件の場合は「賃借期間の定めがある」「賃借期間の更新ができない」「有益費の請求または買取請求ができない」の条件を満たしていれば、賃貸期間を耐用年数として扱えます。

まとめ

店舗の内装工事を考えているなら、耐用年数について理解しましょう。
耐用年数は資産の使用期間を法的に定めたもので、減価償却はその期間に合わせて資産の価値を計上する方法です。
内装工事の費用も減価償却できますが、そのときは内装の種類によって耐用年数を判断します。
賃貸物件の場合は、賃借期間や更新、有益費などの条件をすべて満たせば、耐用年数として扱えます。